2019年度の活動

(1)被災資料の整理や調査活動
1.西日本豪雨被災歴史資料の修復整理
 M家文書は、乾燥作業と目録作成が完了し、その成果を大学紀要で公表した。T家文書の屏風は、県内の表具師に依頼していた修復が終わり所蔵者に返却した。その屏風の下張り文書は現在整理している。また、H家文書とI家文書は洗浄・乾燥を進めている。 
 これらの作業はウェブサイトやSNSを通じて募集したボランティアにもご協力いただいている。

2.新たな被災資料の受け入れ
 2019年11月に神戸・史料ネットの仲介によりY家文書を受け入れた。これも西日本豪雨の際に倉敷市真備で被災した史料群で、今後作業に着手する予定である。

3.民間所在資料目録の作成
 岡山大学日本史研究室の大学院生の協力も得ながら旧備前国分と旧美作国分を作成している。

(2)災害対応
1.2019年台風19号による豪雨
 2019年10月に発生した台風19号によって、東日本各地が大きな被害に見舞われた。岡山史料ネットは、急遽運営委員会を開催し対応を協議した。その結果、歴史資料ネットワークを通じて、被災地で活動する史料ネットへの支援金を送付し、ウェブサイトで提供可能な支援物資のリストを公表した。

(3)組織と運営
1.会員・サポート会員
 2019年7月の総会後、会員とサポート会員に区分がなされた。2020年7月17日時点で、会員が23名、サポート会員が102名の計125名である。2019年7月時点に比べて6名増加した。

2.ニュースレター
 第2号と第3号を発行した。詳細は(4)研究報告・講演参照。ニュースレターはウェブサイトで公開し、情報発信に努めた。

3.ウェブサイト・SNS
 これまで使用していたTwitterとウェブサイトに加え、2020年4月にfacebookページを開設した。2020年7月17日時点で、ウェブサイトの閲覧回数は2243回(2020年4月~7月)、Twitterのフォロワー数は795名、facebookページへのいいねは135件である。

4.他組織との連携
 これまで同様、全国に20以上ある史料ネットとの連携を進めた。その一環として、2020年2月、兵庫県で開催された第6回全国史料ネット研究交流集会に参加し、情報交換・交流を図った。また以前より加盟している岡山県文化財等救済ネットワークの一員として、県内の文化財関係者との連携の維持拡大を図った。その一環として2020年1月に開催された会議に参加した。
 その他には、2月1日から3月22日まで豊橋市美術博物館で開催された、企画展「未来へつなぐ災害の歴史」に協力し、西日本豪雨後の岡山史料ネットの活動が紹介された。

5.寄付・助成
 昨年度に引きつづき寄付の呼びかけを行い、総額6万3646円の寄付金をいただいた(2019年7月1日~2020年6月30日)。

(4)研究報告・講演
・2019.7.21 東野将伸「岡山史料ネットの被災史料レスキューと現状 ―平成30年7月豪雨にあたって―」(史料ネット2019年度シンポジウム「2018年水害被災地の資料保全活動―西日本豪雨・台風21号―」 於:兵庫県民会館)
・2019.7.28上村和史「岡山での被災資料の救出保全―地域の記憶を未来に伝える―」(2019年度岡山史料ネット総会・活動報告会、於:岡山県立美術館)
・2019.9.27 今津勝紀「岡山史料ネットの現状と課題」(令和元年度文化財保護関係者研修会主催:岡山県教育事務所 於:浅口市)
・2019.12.19 東野将伸・山下香織「災害時の資料レスキューと資料保存―平成30年7月豪雨に対する岡山史料ネットの活動―」(令和元年度 中国・四国地区図書館地区別研修 於:岡山県立図書館)
・2019.12.22 今津勝紀「予防ネットから実践型ネットへ-岡山史料ネットの経験-」(地域歴史文化大学フォーラムin 名古屋 地域資料保全のあり方を考える 於:名古屋大学)
・2020.1.11上村和史「西日本豪雨と被災歴史資料の救出・保全」(くらしき市民講座、於:ライフパーク倉敷)
・2020.2.8-9 上村和史「西日本豪雨被災資料救出保全活動の成果」(第6回全国史料ネット研究交流集会、於:御影公会堂)

(5)出版および論文などの掲載
1.『岡山史料ネットニュースレター』第2号、2020年9月30日
・上村和史「活動報告(2019 年 1 月~ 2019 年 7 月)」
・東野将伸「レスキュー史料から」
・宇野淳子「2019 年度岡山史料ネット活動報告会に参加して 」
・政次加奈子「2019 年度岡山史料ネット活動報告会「西日本豪雨と被災資料の救出保全」参加記」

2.『岡山史料ネットニュースレター』第3号、2020年3月31日
・上村和史「活動報告(2019 年 8 月~ 2020年 1 月)」
・宮田克成「西日本豪雨被災資料 修復・整理ボランティアに参加して」
・郡山優樹「 西日本豪雨被災資料修復・整理作業参加記」
・中田利枝子「倉敷市真備町有井 大日堂の仏像レスキューとその後」

3.上村和史「被災資料救出・保全のその後―岡山史料ネットの取り組み―」(『岡山地方史研究』149、2019年12月5日、p43-44)

4.上村和史「広域災害への対処をめぐって―西日本豪雨被災資料、救出・保全の現場から―」(『第5回全国史料ネット研究交流集会in新潟報告書』、2019年12月21日、p27-30)

5.上村和史・東野将伸「岡山県御津郡金川村武藤家文書目録・史料紹介」(『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』49、2020年3月22日、p37-55) doi

6.上村和史「西日本豪雨被災資料救出保全活動の成果と課題」(『倉敷の歴史』30、2020年3月31日、p59-69)

役員
《運営委員》浅利尚民・飯島章仁・今津勝紀・上村和史・内池英樹・佐々木守俊・杉山一雄・徳永誓子・東野将伸・福冨幸・村井良介・山下香織・山下洋
《監査委員》定兼学・清家章

ふすまの下張り文書のはがしとり(2019年12月)