2022年度の活動

(1)被災資料の整理や調査活動
 コロナ禍によりボランティアを広く集めることが困難な状況が続いていたが、2023年5月以降、H家文書のクリーニング作業を再開・継続した(計2回のべ8名参加)。H家はボランティア作業によるクリーニングの後、写真撮影と目録作成を並行して進めている。2020年11月に寄贈をうけたN家の襖下張り文書は剥離作業を終え、目録を作成した(約860点)。T家屏風下張り文書(全403点)は目録作成を完了し、約200点の撮影が残っている。I家文書は目録作成を完了し(全638点)、倉敷市への返還にむけて作業を進めた。2023年4月に新たにI2家より襖下張り文書ほかの寄贈を受け、無酸素殺虫を行っている。
 民間所在資料目録の作成については、岡山大学日本史研究室の大学院生の協力を得て、旧美作国分・備前国分の作成を継続している。

(2)災害対応
 2022年度にも災害対応はなかった。

(3)組織と運営
会員・サポート会員
 2023年7月4日時点で、会員24名・サポート会員は124名、計148名である。2022年7月時点に比べ、10名増加した。

ニュースレター
 (5)記載のとおり、第8号・第9号を発行した。県内外の協力者・協力機関に送付するとともに、ウェブサイトにも掲載した。

事務局体制
 オンラインによる委員会を1回開催したほか、適宜メールによる審議を行った。また、岡山大学内の活動拠点が、学内施設改修工事にともなって、2023年3月に文法経1号館359号室から文明動態学研究所実験棟(旧ボイラー棟)へと移転した。

ウェブサイト・SNS
 ウェブサイトでは会の活動や岡山県内の催し物、加えてtwitterでは西日本豪雨に関する諸動向を中心とした情報発信を心がけているが、2022年7月1日から2023年6月30日時点でのウェブサイトのページビューは5,276(昨年比△285)となった。2023年7月4日時点のtwitterのフォロワー数は1,128(2021年7月13日比209増)、facebookページのファン(「いいね」の数)は463(同比123増)となった。

他組織との連携
 これまでと同様、全国に20以上ある史料ネットとの連携を進めた。その一環として、2023年1月に宮崎市を拠点として開催された第9回全国史料ネット研究交流集会に参加し、情報交換を図った。以前より加盟している岡山県文化財等救済ネットワークの一員として、県内の文化財関係者との連携の維持拡大を図った。2022年11月の研修会、および2023年2月の運営会議に参加し、県の災害対応に関する初動マニュアルの策定に協力した。また2022年7月には岡山市災害ボランティアネットワーク連絡会議が主催する「災害ボランティア展」でポスター展示を行った。

寄付・助成
 引きつづき寄附の呼びかけを行い、計4件21,016円の寄附をいただいた(2022年7月1日~2023年6月30日)。

(4)研究報告・講演
2022.9.19 今津勝紀「Disasters and Human Life:Distinctive Roles of History and Culture」(於:デルヴァジェ大学、グアテマラ共和国)
2022.10.12 今津勝紀「文化財の防災を考える-西日本豪雨の経験から」(国立大学図書館協会セミナー「災害と図書館」、オンライン)
2022.10.29 今津勝紀「吉備の古代社会-正倉院文書とシミュレーション」・「岡山史料ネットについて」(岡山県郷土文化財団主催第10回おかやま文化フォーラム完結編「歴史の実像を求めて 地域と歴史資料」、於:岡山県立美術館)
2022.11.16 松岡弘之「令和4年度岡山県文化財等救済ネットワーク研修会・講評」(令和4年度岡山県文化財等救済ネットワーク研修会、於:岡山県古代吉備文化財センター)
2023.1.28 久野洋「明治26年水害と野﨑家」(倉敷市総務課歴史資料整備室令和4年度文書調査報告会・災害に関する歴史資料調査報告会、於:倉敷市真備支所)
2023.1.29-30 岡山史料ネット(文責・松岡弘之)「2022年度の岡山史料ネットについて」 (第9回全国史料ネット研究交流集会・宮崎、於:宮日会館)
2023.3.11 今津勝紀「地域歴史資料保全の取り組み-災害と人々の暮らし-」(岡山大学文明動態学研究所第1回特別展公開講座第3回、於:岡山シティミュージアム)
2023.6.24 上村和史「金川村武藤家文書にみる明治時代の社会」(御津公民館講座、於:御津公民館)

(5)出版および論文などの掲載
『岡山史料ネットニュースレター』第8号、2022年9月30日
・松岡弘之「活動報告(2022年3月~2022年8月)
・福田雄「「社会調査実習」報告書が目指したもの」(2022年度活動報告会特集)
・藤本瑠奈「岡山史料ネット活動報告会参加記」(同上)
・川田一馬「岡山資料ネット2022年度活動報告会に参加して」(同上)
・松岡弘之「「学生と考える西日本豪雨」によせて」(同上)
・髙野かずみ「学術野営2022in吹屋の参加録」

『岡山史料ネットニュースレター』第9号、2023年3月31日
・松岡弘之「活動報告(2022年9月~2023年2月)」
・中島志保「令和4年度岡山県文化財等救済ネットワーク研修会に参加して」
・渡世理彩「第9回全国史料ネット研究交流集会in宮崎に参加して」
・山下香織「レスキュー史料から(3)」

今津勝紀『日本古代の環境と社会』(塙書房、2022.12)
東野将伸「岡山県における文化財保全の取組と今後の課題―大学関係者の立場から―」(『日本史研究』725、2023.1)
久野洋「明治期の水害対応に関する基礎的考察:明治25年水害を通して」(『岡山県立記録資料館紀要』18、2023.3)
今津勝紀「吉備の古代社会を考える―正倉院文書とシミュレーション」「岡山史料ネットについて」(『岡山の自然と文化』42、2023.3)
定兼学「アーカイブズを取り巻く情勢~岡山の場合、3つの危機から考える~」(『広文協通信』42・43、2023.3)

ボランティア作業の様子(2023年5月31日)