(1)被災資料の整理や調査活動
今年度は以下のような作業に取り組み、西日本豪雨の際にレスキューした資料(7群1,714点)の洗浄作業をほぼ終え、2群1,041点を返却することができた。
I家文書は目録作成を完了し(638点)、2024年1月22日に倉敷市教育委員会を通じて所蔵者に返却した。その後、所蔵者から倉敷市歴史資料整備室に寄贈された。H家文書は、2023年12月、2024年5月にボランティア作業としてクリーニング作業を継続した結果、扇など7点を残して洗浄作業を終えた。目録化は完了し(369点)、今後滅菌作業を行う。T家の屏風下張り文書(403点)は全点の撮影を終え、2024年7月29日に所蔵者に返却した。
また、以下の2つの資料群は、西日本豪雨の後に岡山史料ネットに寄贈されたものであるが、順次整理を進めた。
N家の襖下張り文書(864点)は、2020年11月に寄贈以後の整理・調査作業が完了した。F家文書(昨年度総会でI2家文書と報告した資料群)は、2023年4月に寄贈されたのち、無酸素殺虫を行っていたが、2024年6月にボランティア作業としてドライクリーニング作業を行い、7月から下張り文書の剥がし取り作業に着手した。
なお、I家・H家・N家については、(5)記載のとおり2024年3月に岡山大学文明動態学研究所からそれぞれ調査報告書が発行された。
民間所在資料目録の作成については、岡山大学日本史研究室の大学院生の協力を得て、2024年3月まで旧美作国分・備前国分の作成を継続した。
(2)災害対応
直接的な災害対応は実施していない。2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震に関しては「いしかわ歴史資料保全ネットワーク」の設立準備にともなう情報提供を求められたことから、会則・口座開設等に一部資料を提供した。
(3)組織と運営
会員・サポート会員
2024年7月10日時点で、会員24名・サポート会員は137名、計161名である。2023年7月時点に比べ、13名増加した。
ニュースレター
(5)記載のとおり、第10号・第11号を発行した。資料所蔵者および県内協力機関に送付するとともに、ウェブサイトにも掲載した。
事務局体制
昨年度より岡山大学文明動態学研究所実験棟を拠点に活動を行っている。オンラインによる委員会を1回開催したほか、適宜メールによる審議を行った。
ウェブサイト・SNS
ウェブサイトとフェイスブックでは会の活動について、twitterでは西日本豪雨に関する諸動向等を中心とした情報発信を心がけているが、2023年7月1日から2024年6月30日時点でのウェブサイトのページビューは3,968(昨年比△1,308)となった。2024年7月4日時点のX(twitter)のフォロワー数は1,191(2023年7月4日比63増)、facebookページのファン(「いいね」の数)は584(同比121増)となった。
他組織との連携
これまでと同様、全国に20以上ある史料ネットとの連携を進めた。その一環として、2024年2月に一橋大学で開催された第10回全国史料ネット研究交流集会in首都圏に参加し、情報交換を図った。以前より加盟している岡山県文化財等救済ネットワークの一員として、県内の文化財関係者との連携の維持拡大に努めた。2024年2月の研修会、および2023年3月の運営会議に参加した。また2023年7月には岡山市災害ボランティアネットワーク連絡会議が主催する「災害ボランティア展」でポスター展示を行った。
寄付・助成
引きつづき寄附の呼びかけを行い、計4件15,114円の寄附をいただいた(2023年7月1日~2024年6月30日)。
(4)研究報告・講演
・2023.11.29 東野将伸「セスキ炭酸ソーダ溶液を用いた固着文書資料のクリーニングと開披処置」(水損固着文書開披に関わる研究会、於:九州国立博物館)
・2024.3.2 今津勝紀 「Disasters and human life: New developments in research on disaster and local history 」Community Survival and Historical Culture in the Era of Massive Disasters : Perspectives from Local Historical Materials Studies
・2024.3.7 今津勝紀「Demographic and social transformation in ancient Japan」
Multi-disciplinary and Inter-regional Perspectives on Environmental History-Towards Comparative Study between Europe and Japan
(5)出版および論文などの掲載
『岡山史料ネットニュースレター』第10号、2023年9月30日
・松岡弘之「活動報告(2023年3月~2023年8月)
・村上裕康「地域の歴史と向き合い続けて」(2023年度活動報告会特集)
・松岡弘之「コメント」(同上)
・内山和有「歴史との様々な関わり方~元ディレクター・村上裕康さんのお話しを聞いて~」(同上)
・事務局「活動拠点の移転について」
『岡山史料ネットニュースレター』第11号、2024年3月31日
・松岡弘之「活動報告(2023年9月~2024年2月)」
・山下香織「井上家文書の返却」
・室山京子「『倉敷市真備 土師家文書報告書Ⅰ』刊行のお知らせ」
・内池昭子「「旧永瀬家住宅襖下張り文書目録」について」
・齋藤興希「第10回全国史料ネット研究交流集会in首都圏」(参加記)
・山下香織「レスキュー史料から(4)」
・山下香織『西日本豪雨災害による被災資料の整理作業報告書 ―倉敷 井上家文書―』(岡山大学文明動態学研究所、2024.3)
・室山京子『倉敷市真備 土師家文書報告書 Ⅰ』(岡山大学文明動態学研究所、2024.3)
・内池昭子『旧永瀬家住宅襖下張り文書目録』(岡山大学文明動態学研究所、2024.3)
・今津勝紀「古代の災害と社会」(吉村武彦ほか編『シリーズ 古代史をひらくⅡ 天変地異と病』岩波書店、2024.1 )
・今津勝紀「災害と人間の暮らし」(『文明動態学』3、2024.3)
・今津勝紀「大門正克・岡田知弘・川内淳史・河西英通・高岡裕之編『「生存」の歴史をつなぐ: 震災10 年、 「記憶のまち」と「新たなまち」の交差から』 」(『文明動態学』3、2024.3)
・久野洋「新刊案内 土田宏成・吉田津人・西村健編著『首都圏史叢書8 関東大水害―忘れられた1910年の大水害―』」(『地方史研究』74巻2号、2024.4)